自分の行動原理を紐解くと面白かった
日々、githubのissueにその日の振り返りを書いているのですが、その時「なぜ自分はそのような行動を取ったのか」という疑問が生まれました。そこから連動して「自分の行動原理ってなんだろう」と思ったので、いろいろと深掘ってみました。
自分の行動原理を紐解いていくの面白い、という話をだらだらしたいなぁ。
— at_grandpa@技術書典4執筆中 (@at_grandpa) 2018年2月28日
「なぜ自分はこういう行動を取ったんだろう」というのを突き詰めていくと、どんどん深く潜れて、一見反対の行動でも最終的に一つの解に行き着く。
以下、勢いで書きなぐっているので、とても長いですし、いつもとは文体がおかしいです。ご了承ください。
日々のふりかえり
Githubに「diary」というプライベートリポジトリを作り、毎日issueを立て、そこにふりかえりを書いている。結構良い。自分と対話できて、自分を知れる。箇条書きでひたすら「語りかけ」と「応答」を繰り返している。例を挙げると以下のような形だ。
- 今日はあまり進捗が良くなかった
- なんで良くなかった?
- どの部分が進捗良くなかった?
- あー、プロジェクトAの設計の部分が特に良くなかった
- 他は良かった?
- 他は進捗良かった
- 設計が難しかったのか?
- どう難しかったんだろうか
- 悩んだのはXXの部分
- どれくらい悩んだ?人に聞けなかった?
- あーそうか、早い段階で聞けばよかったか
- 聞くなら◯◯さんか
- 明日聞いてみるか
こんな感じで自分と会話している。文章にすることで客観的に事実を見ることができ、そこに疑問を感じられるようになった。そして、疑問すらも文章化することで、今度はその疑問に答えようとして頭の中が整理されていく。わりとこの方法は気に入っている。
ISSUE_TEMPLATE.md には「日々やること」を書いておき、毎日の進捗を書くようにしていた。例えば「ランニング」「資産運用」「プロジェクトマネジメント」など。少しでも気付いたことをメモしたり、日記に紐付けて習慣化しようという試みだ。しかしまぁこれが続かない。いつも「今日はナシ」とだけ書くようになっていた。
ふと、「なんで続かないんだろう」と疑問に思った。疑問に思ったことは文章に書こう。自分に質問しよう。
- なんでランニングとか資産運用の勉強とか続かない?
できていることとできていないこと
疑問を文章化したら、今度は答える番だ。
- なんでランニングとか資産運用の勉強とか続かない?
- 心理的障壁が高い
- 優先順位が上がらない
- やる気が出ない時間帯にやろうとしている
なぜ続かないかを答えていく。こうやって理由を考えていると、ふと次の疑問が浮かんだ。
- 今まで続いていたことはあった?
- それはなんで続いていた?
この疑問は1つのヒントになりそうだ。答えていこう。
- 今まで続いていたことはあった?
- 趣味のカメラは長年やり続けているなぁ
- なんで続いていた?
- やる気が出るから
- やる気ってなんで出たんだろ?
- 良い写真が撮れるから
- いいね!がつくから
- このあたり?
- 反応があれば気持ちいいもんなぁ
なんとなく、「自分が物事を率先して行う理由」がわかってきそうだ。
壮大な疑問
ここまでわかってくると、もう少し壮大な疑問が生まれた。
- 自分の行動原理ってなんだろう?
「ランニングが続かない理由」や「資産運用の勉強が続かない理由」、逆に「趣味のカメラを続けられた理由」、それらをさらに抽象化すると「行動原理」となる。自分はどういう時に行動を起こし、どういう時に行動を起こさないのか。行動の根源はなんなのか。
この疑問が生まれた瞬間、とても興味が湧いた。今までの行動の理由が知れるのはとてもワクワクした。絶対に暴きたい。
行動原理を考える
とはいえ、行動原理はどうやったらわかるのだろう。行動原理の導き方なんぞ知らないので、地道に探っていくしかない。
そう思っているときに、 @matsumotory さんのブログに出会った。
自分のやってきたことを改めて俯瞰して振り返り言語化してみて、その試行を繰り返し試すことで、自分だけの、自分に合った行動原理みたいなものが朧げに見えてくるのだな、ということを認識できたのは自分にとっても良い収穫でした。
おお、まさに今自分が考えていることが述べられていた / 他14コメント https://t.co/T3z7OyrqCn “自分だけの行動原理を作り上げていく - 人間とウェブの未来” https://t.co/DL5j2jLpJg
— at_grandpa@技術書典4執筆中 (@at_grandpa) 2018年2月28日
なるほど。自分の今までの行動を振り返って言語化し、共通項を見出す感じか。行動原理はすべての行動の源であるから、数多の具体的な行動の共通項なんだ。つまり、行動の抽象化だ。今までの自分の行動パターンを羅列し、その中の共通項を絞り出そう。
まず始めに、自分の行動の羅列だ。どんどん書いていこう。
- ランニングが続かない
- 時間がない
- つらい
- 資産運用の勉強が続かない
- 優先順位が上がらない
- ほかに大事なことがある
- 趣味のカメラは続いている
- 写真をいち早く公開したい
- 良い写真が撮れるようになると面白い
- etc ...
よし、書いた。ここから「自分の行動の共通項」を探し出す。これらは「できている」「できていない」という相反する行動なので、そこから共通項を絞り出すのはとても難しかった。おそらく4,5日、通勤時間や昼休み、寝る前などにずっと考えていた。あーでもないこーでもないと、ずっと唸っていた。その時のメモの一部が以下である。
- なぜ続かないのか
- 心理的障壁が高い
- やる気の起きない時間帯にやろうとしている
- 続いているのはなんでだろう
- やる気がでているのはなんだろう
- 効果があるもの?
- 進捗があるもの?
- 小さい進捗があれば良さそう
- きもちいいもんね
- 小さい進捗がでるようなタスクにすればいいのかな
- やっぱり、人に反応してもらいたいんだよなぁ
- それも、短期的に
- それでやる気になることも事実なんだよなぁ
ずっと考え、ずっと悩み、何度も言語化して失敗し、それでも諦めずに探して探して探しまくった。そしてやっと自分の行動原理を表す言葉を見つけた。蓋を開けてみれば、とてつもなくシンプルな言葉だった。
「短期的に承認を得たい」
これだけ。短い。あんなに絞り出すのに苦労したのに。だけどまぁ、シンプルに言語化できたのは良かった。良しとしよう。
この行動原理は、今までの自分の行動をすべて説明できるはずだ。その検証をしよう。
本当にその行動原理で合っているか
まず、ランニングや勉強が続かない理由。行動原理からすると、その理由は「短期的な承認が得られないから」だ。例えば、フルマラソンを月1回は走っています、だと少なからず賞賛されだろう。自分の承認欲求は満たされる。しかし、そこに到達するまではとても長い年月がかかる。行動原理の「短期的な」の部分に反するので、自分は行動を起こさない。
次に、趣味のカメラが続いている理由。行動原理からすると、その理由は「短期的な承認が得られるから」だ。正直、この行動原理で説明できたときは自分でも驚いた。なぜなら「カメラが好きだから」という理由が第1位ではなかったからだ。撮った写真を公開し、「いい写真だね!」とコメントを貰いたいからだ。行動原理に沿って、ちゃんと「短期的な承認」を得ている。これも説明できた。(勘違いしないでほしい。カメラは純粋に好きである。しかし、行動する・行動しないに作用する力は、行動原理のほうが強かった。)
他にも思い当たる部分はいくつもある。あの時の行動も説明できるし、あの時の判断も説明できる。ああ、やはり自分の行動原理はこれだ。やっと見つけた。よく絞り出したもんだ。よくやった。
しかし、自分はこの行動原理が好きではない。 きらいだ 。
弊害
「短期的に承認を得たい」という行動原理は、致命的な弱点がある。その前に、まずは「なぜこのような行動原理になったのか」を説明しよう。
今思い返すと、それは子供の頃の経験が鍵であった。学生の時のテストで多少良い点を取った時に賞賛された。その賞賛の甘い味を知ってしまったのだ。他人に評価されることが気持ちいい。逆に、評価されないことが極端につらい。それが恐怖となり、甘い味にすがるようにがむしゃらに勉強した。一種の麻薬だ。すぐに切れる麻薬。承認を得たい。早く得たい。そういった生活を続けてきたせいで、今の自分の行動原理が構築された。幼少期の経験からも、全て説明がつく。
このような行動原理は以下の弊害を生む。
- 「長期的でやるべきこと」をやろうとしない
- 承認が得られなかった場合のストレスが大きい
これはつらい。このような弊害のある行動原理は見直そう。ストレスにならない行動原理へ修正しよう。そうすればきっと行動も変わるはずだ。
行動原理を見直す
自分の行動原理が致命的なのは何故か。それをまた箇条書きで自問自答してみる。そうしていくうちに理由がわかった。それは 「外的要因に左右される」 からだった。
他人からの承認は自分でコントロールできない。自分でコントロールできない事柄に心が乱される。今の自分の行動原理だと、この領域からは決して抜け出せない。だから行動原理を変えよう。
新しい行動原理を考える上でのポイントは2つ。
- 外的要因に左右されない
- 行動に結びつくモチベーションを生む
外的要因に左右されないのは重要だ。今までの行動原理で起きていた弊害を抑えられるからだ。行動に結びつくモチベーションを生むことも大切だ。これがなければ「行動原理」そのものではなくなってしまうからだ。
この「新しい行動原理」の言語化も本当に難しい。
案がいくつか浮ぶのだが、すぐに外的要因が入ってきてしまう。例えば「仕組みを理解して使いこなしたい」という行動原理を掲げたとする。ランニングの場合、どうやったら楽に走れるのか、どういうトレーニングをしたらタイムが伸びるのかなど、人間の身体の仕組みを解き明かすために走るだろう。しかし、これに対して「なぜ理解したいのか」という疑問をぶつけられると弱い。自分の場合は「人間の身体の仕組みを理解してそれを披露し、他者から承認を得たいからだ」という外的要因に結びついてしまった。理解したいという欲求の先には、承認を得たいという欲求が潜んでいたのだ。自分への質問を繰り返し、それに答え続けることで、この存在が明らかになった。自分クズだなー。
「『すごい』を体感したい」という行動原理も考えた。オリンピックをみてすごいと感じたり、絶景をみてすごいと叫んだり、「あの映画すごい!」と聞いて見に行ったり。人間には「すごい」や「素晴らしい」を欲する欲求があると考えた。「すごい」の基準は完全に主観であり、外的要因は入らない。なので、「すごい」を追い求めて行動することは、自分の行動原理に合っているのではないかと考えた。検証のために、この行動原理を掲げて数日を過ごしてみた。結果、わかったことは「そこまでモチベーションが生まれない」だった。ポイントの二つ目を満たさなかった。うーん、難しい。
ここからまた数日考え込むことになる。「成長を実感したい」か?いやいや、成長そのものを欲しているのではなく、他者よりも成長したという優越感を欲しているんだろ。それは外的要因が入っているのでアウトだ。他者に依存しているし、成長を実感できなかった時のストレスがでかい。弊害を除去できていない。
こうやって自問自答を繰り返していくうちに、あることに気がついた。「すべて自分の中で完結すればよいのだ」。そうすれば外的要因は一切入らないので、弊害が生まれない。あとはモチベーションが上がる事柄を見つけるだけだ。
そうやって試行錯誤し、必死に考え、検証し、やっと出てきた行動原理が以下である。
「『できるようになった』を蓄積したい」
何だそりゃ、と思うかもしれない。別にかっこいい行動原理を求めているわけじゃない。自分が納得できればそれでいい。とりあえず以下説明。
- 「できるようになった」は過去の自分と今の自分の比較であり、外的要因は入らない
- 「成長」と近しいが、他者との比較からの優越感には結びつきにくいニュアンスである(これは主観である)
- 「できるようになった」が蓄積することは単純におもしろいし、自分の可能性も広げてくれるので魅力的
とりあえず、今しっくりきている行動原理はこれだ。今後運用していき、修正が必要であれば都度修正していく。
やっと新しい行動原理を見つけたところで、次は行動に結びつける訓練を行おう。
行動原理を運用していく
行動原理なので、何かの行動の際はその源にならなければならない。しかし、まだ出来上がったばかりの行動原理をうまく使いこなせていない。「『できるようになった』を蓄積する」という行動原理を使いこなせるよう、以下のテンプレートを用意した。何か行動を行うときは、これらを実践してみることにする。
- 「できるようになった」の定義を決める
- その際、外的要因は一切入れない
- できるようになったら嬉しくなるような定義にする
- めんどくさくない程度まで「できるようになった」を分割する
- 短期的かつ少量の蓄積で、モチベーションを維持する
- 達成できなかったら分割が甘かったと認識し、さらに細かく分割する
- ストレスに直結しない工夫
- できた・できなかったに関わらず、必ずふりかえりをする
現在はこの運用でうまくいくかを検証中だ。trelloのリストに大目標を掲げ、カードには分割した「できたの定義」を追加していく。このカードが全てなくなれば、リストに掲げた目標を達成できるということだ。運用方法はこれからも改善していく。
実際に「このブログを書く行動」に対して、新しい行動原理を当てはめてみた。trelloのカードは以下。
外的要因を避け、完了したら嬉しくなるように定義する。これはなかなか難しいな。定義の仕方でモチベーションが乱高下する。また自問自答を繰り返して、モチベーションが乱高下する原因を探ろう。まだまだ改善の余地がありそうだ。
まとめ
今回の取り組みを経て、自分の行動原理を知れたのは本当に良かった。なぜ自分はストレスを感じるのか、なぜ自分は行動しないのか、その理由がわかると対処しやすいものだ。まずは相手を知ることから。相手がわからなければ対処のしようがない。そして、新しい行動原理を提案できたことも良かった。発見した旧行動原理は嫌いだったので、今後はどんどん改善していこうと思う。「あいつ、普段と何か違う行動を取り始めたな」と感じる方がいたら、今回の取り組みの成果かもしれない。
また、今回の副産物として、以下の取り組みは自分に合っていると思った。
- 箇条書きで自問自答する
- 多数の具体例を並べて、そこから抽象的な部分を抽出する
箇条書きでの自問自答は本当に良い。自分には合っている。事実を客観的に見ることができるし、疑問も生まれやすい。疑問に解答することで、答えに近づける。この取り組みは今後も続けていくと思う。
具体例から抽象的な部分を抜き出すのは、自分の中ではこれが「学習」だと思っている。具体例という経験から汎用的な部分を抽出し、他の具体例で活用できるようにするからだ。抽象化することで覚えることが少なくなり、頭にも残りやすい。とはいえ、一度抽出したら終わりではなく、試し、検証し、ふりかえりを経て、その抽象項目も改善していかなければならない。時代的な要因もあるだろうし。この取り組みも大切だと思うので今後も続けていくと思う。まだまだ修行が足りないが。
さらにもう一つ、今回の取り組みで重要なことに気がついた。今回は、「行動原理を探る」というテーマのもと、「箇条書きでの自問自答」や「抽象化」などの方法を経験できた。しかし、これらの取り組みは「本やネットに書いてあることをそのまま適用した のではない 」ということだ。こういった思考方法は数多の情報があるが、それを丸呑みするのではなく、自分なりの方法を確立するためのヒントとして捉える。自分に合った方法は自分で見つけるのが重要だと思う。例えその方法が丸っきり本に書かれていることと同じだとしても、自分で見つけた方法というだけで自信が生まれ、圧倒的に行動に繋がる。丸呑みでは、この自信は得られないと思う。今回は「行動原理を知りたい」という欲求に突き動かされ、自然とこれらの方法にたどり着いたが、今後は他の方法についても意図的に探っていこうと思う。「箇条書きの自問自答」があるので、探せないことはないだろう。
まだ「新しい行動原理」は正しいのかは検証中である。検証結果もブログに残そうと思っている。
※他の方の行動原理にも興味があるので、興味がある方は @at_grandpa までお声掛けください。